「信号機は、人の命の上に出来てきた」と、被害者支援に全国的に取り組んでいる尊敬する先輩、日野市議会の菅原さんが言っていたことを思い出しました。これは死亡事故があって初めて信号機が立つという意味なのですが、これまで色々な法律や条令、ルールの多くは「事件・事故」があって、やっと出来たという歴史が日本にはあります。被害者支援や危険運転致死傷罪、飲酒運転厳罰化も遺族が訴えてできた法律です。
ニュースでご覧になった方も多いと思いますが、市内で母子の孤立死が起きてしまいました。事件の詳細は書きませんが、呼びかけても揺すっても起きないお母さんを目の前にして、お腹がすいても喉が渇いても何も出来ずに死に至った子どものことを想像すると言葉が出ません。報道では市の担当課長がインタビューで答えていましたが、虐待を含める地域の支えあい、行政が異変を発見する仕組み構築の必要性や施策としての取組みの強化については、私もこれまで数回に渡り議会で訴えてきました。でも、ここで犯人探しをしたり、役所を攻めることはしません。意味がないし、未来に繋がりませんから。
ただ冒頭に書いた信号機と同じく、市の「起きる前に取り組む」という姿勢が消極的であったことは否定できません。
以前の議会で「児童虐待をどう防ぐか」について質疑をしました。
私からは「虐待をなくすためには特効薬ではなく、発見できるかもしれない網を張り巡らせること。子育てに悩んでいる家庭や小さな異変から最悪の事態を回避するために、「こんにちは赤ちゃん事業(乳児を持つ全家庭を専門家が訪問し育児相談やアドバイスをする施策)」など、全家庭訪問型の制度を導入し、また現在の制度を人員ともに拡充し、他の同施策関係者と連携を図り、体制を充実するべき」と発言をしました。それに対し、市の答弁を抜粋すると…
『全国的な虐待ケースの増加が見られる中で、本市では新規の通告件数は2年連続で58件と横ばいであり、虐待に至る前の把握や地域での支え合いが功を奏しているものと考えている(市長答弁)』
『こんにちは赤ちゃん事業は子育て情報や母親の育児不安や悩みの傾聴、地域のネットワークづくりが目的となっており子育て支援の必要性を見るもの。本市では妊産婦・新生児訪問指導事業を通して母子の状況把握の徹底に取り組んでいる。この取り組みにより、母親の孤立感と育児不安の軽減を図り、健全な子の育成の支援に役立っているものと考える。継続支援が必要な母子につきいては、保健師が訪問を行い、必要に応じて子ども家庭支援センターなどの関係機関と連携を図り支援を行っている。(部長答弁)』
『今後の展開として、どういう体制がいいのかということを検討する組織を設置して、きめ細かなあり方を検討を開始する。民間の事業所などとも協力し支援の場を広げる工夫を図っていきたい。(部長答弁)』
(※市長の答えた「2年連続58件だから今までの取組みが功を奏している」という答弁に「58件が1年で解消されているわけではない。累積で見れば功を奏していると言えるのか。」と質問しましたが直接的な回答はありませんでした…)
随分長くなってしまいましたが、お分かりになりますでしょうか?つまりは「今まで取り組んできているし、効果が出ている」「他のことは全部これから検討していく」というのが昨年時点の市の見解でした。
ここでご紹介したやり取りは、児童虐待防止を主として行った質疑です。しかし虐待に繋がる前に育児不安や孤立感を拭うことで様々な問題が防げるということを提案しましたが、市はこのような認識でした。役所だけで解決できる問題とは思いません。しかしそれでも救えたかも知れない命があったとすれば悔しくてなりません。
そして、今回の事件を受けて市は改めて再発防止に取り組むと発表をしました。再発防止への取組みは評価します。しかしここにもまた命の上に信号機が立ちました。起きる前に防ぐことが何故できなかったのか。自分にできることは何なのか…これからずっと考えていきます。