ある団地の自治会で起きている「ごみ出し」の問題から見えてきた課題。
高齢になり、身体的な理由で集積所までの往復ができない。また認知機能の低下により、ごみ出し自体が難しい。こうした方々に対し「自治会やヘルパーさんが対応をしているが、それにも限界がある。どうしたら解決できるだろうか」ということで、介護事業者、地域包括、社会福祉協議会、自治会、民生委員が集まり、それぞれの得意分野を生かしながら解決策を考えようという懇談会に参加し意見交換をしています。
さすがはこの道のプロ。参加者は豊富な経験や知識を持つ方々ばかりで、特に現場の実態については「そんな状況なのか」と思わされることばかりで、一議員として反省しながらも現場を知ることの大切さを痛感しています。
これだけ経験や知識の宝庫が沢山いるのに「市が行っている高齢者事業と繋がっていないのは何故だ…」という疑問にぶつかりました。
ある日、参加者の一人が「立川市が行っているごみ出し支援事業の対象者は28人」という情報を出すと、参加者は一様に「28人どころではないはず」と驚かれていました。
実は、立川市では支援が必要な人に対し「ごみ出し支援事業」という支援を行っています。「なら、解決じゃない」となりそうなのですが、ここで一つ目の問題が。
支援を受けるには幾つか条件があるのですが、その中の一つに「要介護3以上」というものがあります。要介護3とは「立ち上がりや歩行、食事、排せつ、入浴の際に全面的な介助が必要」な方を指します。しかしそれ以外は大丈夫なのでしょうか。要介護3より定義上支援の必要性が低いとされる要支援1の方でも認知症の可能性がある方が存在します。
加えて、この支援事業は「集合住宅に住んでいる方」のみが対象となっています。一戸建てに住んでいる方はみんな元気…な訳がありません。
つまり、支援が必要な人の「括り方」に無理がある。ということです。これが1つ目。
2つ目の問題は、高齢化社会が抱える(これから抱えていくであろう)問題には、部署の垣根を越えて全員で立ち向かわなければならない、ということです。
分かり易い例が、「災害時避難行動要支援者」との比較です。
災害時避難行動要支援者とは、その名の通り災害発生時に避難するにあたり手助けが必要な方を指し、要介護3以上の方が対象になります。市は有事に手助けに入れるようこの方たちの名簿を作っており、昨年10月末日時点で、名簿には5,444人が登録されています。
そう、避難時の支援策もごみ出しの支援策も同じ「要介護3以上」という条件なのです。
片や災害時に支援が必要な人は5,444人いるのに、片やごみ出しには28以上人しかいない…どうなってんの?ということになりませんか。
言うまでもなく、災害時の名簿は市民生活部が管理し、ごみ出し支援は環境下水道部が管理しており、同じ役所内で「ちょっと、うちの名簿こんな風なんだけど情報足りてる?」という事ができていなかったという事例です。
この事を議会で取り上げると「会議の数」は沢山あるんだと答弁がありましたが、数は問題ではないということがお分かりいただけると思います。
2つ目の問題を解決するには、従来の申請主義を改め、行政自ら情報を取りにいくプッシュ型の支援に切り替えなくてはなりません。
事業者も地域包括も民生委員も、市から委託されている側からすれば基本は「規則に則る」のは当然です。もちろんその中でも明らかにおかしい事は現場から声を上げて頂いていますが、委託している側から「どうなっていますか?」「問題ないですか?」と聞く姿勢があると無いとでは、数年後大きな結果の違いが生まれるでしょう。
声なき声に耳を傾けられるか。これは、行政と議会の共通した責務なのだと思います。